「中間選挙の年は株が下がりやすい」って本当?
「中間選挙の年はアメリカの株価が下がりやすく、選挙が終わると上がりやすい」——投資系のニュースやコラムで、こうした話を見かけたことはないでしょうか。2026年11月は、まさにその米中間選挙にあたります。今年のS&P500の値動きが冴えないと感じている方にとっては、「あの噂は本当なのか、それとも単なる俗説なのか」が気になるところだと思います。
こうした「よく言われる話」を、パンフレットやコラムの言葉のまま信じるのではなく、実際の値動きデータで確かめてみる。それが今回のテーマです。1950年から2026年までのS&P500・約76年分のデータを使い、「中間選挙の年は本当に弱いのか」「弱いとしたら、どの時期がどれくらい弱いのか」「個別の年で見ても信頼できる傾向なのか」を、順番に検証していきます。
そもそも、なぜ「中間選挙の年は弱い」と言われるのか
まず、このアノマリー(経験則)の背景を押さえておきます。これは投資アナリストのイエール・ハーシュ氏が提唱した「大統領選挙サイクル理論(Presidential Election Cycle Theory)」の一部として知られているものです。米国の大統領任期4年間を、選挙翌年(1年目)・中間選挙年(2年目)・選挙前年(3年目)・大統領選挙年(4年目)の4つに区分し、それぞれの時期で株価の傾向に違いがあるという考え方です。
中間選挙年(2年目)が弱くなりやすいとされる理由としては、主に以下のような説明がされています。
- 政権発足から時間が経ち、公約実現に向けた政策の不透明感が意識されやすい時期であること
- 財政出動や金融緩和など、市場が好感しやすい政策が選挙前年・選挙年に集中しやすく、中間選挙年は相対的に材料が乏しいこと
- 中間選挙の結果次第で議会構成が変わり得るため、政策の先行き不透明感が高まりやすいこと
ただし、これらはあくまで「そう説明されることが多い」理論的な背景であり、それ自体が値動きを保証するものではありません。理論の妥当性はいったん置いて、実際のデータではどうだったのかを見ていきます。
データの出典
本記事で使用するデータは以下の通りです。
- データ:S&P500種指数(ティッカー:^GSPC)の日次終値
- 取得期間:1950年1月3日〜2026年8月11日
- 取得日:2026年8月12日
- 取得元:Yahoo Finance(yfinance経由)
- 大統領選挙サイクルの年区分:米大統領選挙が実施される年(西暦が4で割り切れる年)を「4年目」、その2年後の中間選挙が実施される年を「2年目(中間選挙年)」と定義。1950〜2026年の期間で、中間選挙年は1950・1954・1958…2022・2026年の合計20回
なお、^GSPC は価格指数であり、配当を再投資した場合のトータルリターンではない点にご留意ください。実際に投資信託やETFで得られるリターンは、配当込みでこれより高くなります。また、各年の値動きには金融危機・戦争・オイルショックなど、選挙サイクルとは無関係の固有の出来事も多く影響しており、この点は後段の「留保」でも改めて触れます。
検証①:サイクル4年間で、中間選挙年は本当に弱いのか

1950年から2025年までの76年間(各サイクル年19回ずつ)で集計すると、サイクル年別の平均リターンと勝率は次のようになりました。
| サイクル年 | 平均リターン | 勝率(プラスだった年の割合) |
|---|---|---|
| 1年目(選挙翌年) | 8.5% | 63.2% |
| 2年目(中間選挙年) | 4.3% | 52.6% |
| 3年目(選挙前年) | 16.7% | 89.5% |
| 4年目(大統領選挙年) | 8.1% | 84.2% |
結果は、俗説とおおむね一致しています。中間選挙年(2年目)の平均リターンは4.3%と4年間で最も低く、勝率も52.6%とほぼコイントスに近い水準です。対照的に、選挙前年(3年目)は平均16.7%・勝率89.5%と際立って強く、この時期に安定して上昇しやすいという傾向がはっきり出ています。「中間選挙の年は弱い」という部分だけでなく、「その前後の年は強い」という大統領選挙サイクル理論全体の構図も、このデータからは確認できる形です。
検証②:中間選挙年は「いつ」弱くなりやすいのか
平均で見ると中間選挙年が弱いことは分かりましたが、1年間ずっと弱いわけではないはずです。次に、月ごとの値動きパターンを見てみます。

年初の水準を100として月末値を追うと、中間選挙年(赤線)は1月から9月にかけて一貫して年初水準を下回り続け、6月には年初比-2.3%まで下落しています。非中間選挙年(青線)が右肩上がりで年末に+11.1%まで伸びているのとは対照的です。
転機は10月以降です。中間選挙年も10月から反発に転じ、11月・12月と回復して、最終的には年初比+4.3%まで戻しています。ちょうど中間選挙(例年11月上旬)を境に、値動きの勢いが変わっているように見えます。「4〜9月ごろまで軟調、選挙後に戻る」というのは、俗説として語られる内容とおおむね符合する結果です。
もっとも、非中間選挙年との差(下段グラフ)を見ると、この乖離は選挙後もゼロには戻らず、年末時点でも-6.7ポイントの差が残っています。「選挙が終われば元通り」というよりは、「弱さの一部を選挙後に取り戻すが、年間を通じたリターン自体は他の年より低いままで終わる」というのが、より正確な言い方だと考えます。
検証③:個別の年で見ても信頼できる傾向なのか
平均値としての傾向は確認できましたが、投資判断の材料として使えるかどうかは別の問題です。個々の中間選挙年で、実際どれくらいばらつきがあったのかを見てみます。

直近9回(1994〜2026年)の中間選挙年を見ると、1998年の+26.1%から2002年の-23.8%まで、振れ幅は非常に大きいことが分かります。プラスだった年は5回、マイナスだった年は4回で、必ずしも「中間選挙年は毎回下がる」わけではありません。
対象を1950年からの全20回に広げても、傾向は同様です。マイナスだった年は9回(45%)、プラスだった年は11回(55%)で、最良の年(1954年、+44.2%)と最悪の年(1974年、-29.8%)の差は70ポイント以上に及びます。「平均では弱い」ことと「今年もそうなる」ことの間には、大きな距離があると言えます。
この「過去の平均パターンだけで将来を予測することの危うさ」については、以下の記事でも別の切り口から検証しています。


それでも「必ずそうなる」とは言い切れない理由
ここまでの検証で、「中間選挙年は他の年より弱い傾向がある」こと自体は、データ上おおむね裏付けられたと言えます。ただし、これを投資判断にそのまま使うには、いくつかの留保が必要だと考えます。
第一に、サンプル数の少なさです。中間選挙年は4年に1度しか訪れないため、1950年からのデータを使っても20回分しかありません。株式市場の値動きを語るサンプルとしては、決して多いとは言えない数です。
第二に、他の要因との交絡です。2002年の大幅マイナスはITバブル崩壊後の調整局面、1974年の大幅マイナスは第一次オイルショック後のインフレ局面と重なっており、「中間選挙年だから下がった」というより「たまたまその時期に別の大きな出来事が起きた」側面が強いと考えられます。逆に1998年の大幅プラスは、アジア通貨危機からの回復とITバブル形成初期という追い風が重なった年でした。金利サイクルや地政学リスクなど、選挙サイクルとは独立した要因の影響を、単純な平均比較で完全に切り分けることはできません。
第三に、2026年固有の材料です。本記事執筆時点(2026年8月)では、日銀の利上げ観測を背景にした円安・米国のインフレ動向・AI関連株の評価をめぐる議論など、選挙サイクルとは別の材料が相場に影響を与えています。過去の平均パターンは参考情報の一つではありますが、それだけで今年の値動きが決まるわけではありません。
日銀の利上げという「事象」が為替や相場にどう影響してきたかを検証した以下の記事も、今回と同様に「よく言われる話を一次データで確かめる」というアプローチで書いています。あわせてご参照ください。

まとめ:読者の状況別に考える
- 積立投資を淡々と続けている人:中間選挙年の弱さは統計的な傾向として確認できるものの、個別の年のばらつきが非常に大きく、当てにして売買タイミングを計るのはリスクが高いと考えます。長期・積立・分散という基本方針を崩す理由にはならないでしょう
- 今年の値動きの弱さが気になっている人:仮に2026年が過去の平均的な中間選挙年のパターンをなぞっているとしても、それ自体は「よくあること」の範囲内である可能性があります。ただし、これは楽観も悲観もできる材料であり、断定はできません
- アノマリー投資に興味がある人:平均としての傾向は存在するものの、20回程度のサンプルで、かつ他の要因が交絡している以上、これ単体を投資判断の軸にするのは慎重であるべきだと考えます。あくまで「参考情報の一つ」として捉えることをおすすめします
免責事項
本記事で紹介したデータは、S&P500種指数(^GSPC)の過去の実績値に基づくものであり、将来の運用成果や値動きを保証するものではありません。本記事は特定の投資判断・売買タイミングを推奨するものではなく、過去の統計的傾向を検証したものです。投資判断は本記事の内容のみに基づかず、最新の一次資料をご自身でも確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。


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