S&P500、2026年の上昇の「主役」はマグニフィセント7ではなかった?寄与度を一次データで試算した
S&P500は2026年8月13日、終値7,798.99ptで年内27回目となる最高値を更新しました(日中高値は7,814.88pt)。CPI・PPI(消費者物価・卸売物価)の下振れとAI関連企業の好決算が背景とされ、ニュースやSNSでは「AI相場」「マグニフィセント・セブン(Apple・Microsoft・Alphabet・Amazon・Nvidia・Meta・Tesla、以下マグニフィセント7)が市場を牽引している」といった見出しをよく見かけます。
ただ、この「AIが牽引している」という語りは、実際どこまで数字に裏付けられているのでしょうか。エンジニア視点で気になるのは、「マグニフィセント7の株価が上がっている」ことと「S&P500全体の上昇のうち、実際に何%がマグニフィセント7由来か」は、似ているようで別の問いだという点です。後者は各銘柄の指数内ウェイト(構成比率)まで踏まえないと計算できません。
当ブログのコンセプト「パンフレットの数字は信じない」にならい、今回はS&P500の年初来の値上がり分を、マグニフィセント7とそれ以外の493銘柄に寄与度ベースで機械的に分解し、一次データで試算してみます。

データの出典
今回の試算で使用したデータは以下の3種類です。
①マグニフィセント7各銘柄のS&P500構成比率(ウェイト)
- SPDR® S&P 500® ETF Trust(SPY)Fact Sheet(State Street Investment Management)の「Top 10 Holdings」より
- 年始時点:2025年12月31日時点のFact Sheet(Top 10構成比率合計39.2%は、S&P Dow Jones Indices公式ファクトシートの「Weight Top 10 Constituents」の数値とも一致することを確認済み)
- 直近時点:2026年8月20日時点のFact Sheet
- SPYはS&P500への連動を目的とするETFで、その保有銘柄ウェイトはS&P500の実際の構成比率にきわめて近い値になります
- 取得日:2026年8月23日
②マグニフィセント7各銘柄・S&P500指数(^GSPC)の株価
- データ内容:2025年12月31日〜2026年8月21日(直近営業日)の日次終値
- データ出典:Yahoo Finance(yfinance経由)
- 取得日:2026年8月23日
なお、指数のウェイトは日々変動しています。今回は「2025年12月31日時点のウェイトを基準に固定し、その後の株価変化率をかけ合わせる」という一次近似で寄与度を試算しています。この近似の限界については後述の留意点セクションで詳しく扱います。
検証①:マグニフィセント7、ウェイトはむしろ縮んでいた
まず、マグニフィセント7各銘柄のS&P500内ウェイトが、年始から直近までどう推移したかを確認します。
| 銘柄 | 2025/12/31 | 2026/8/20 | 変化 |
|---|---|---|---|
| エヌビディア(NVDA) | 7.75% | 7.98% | +0.23pt |
| アップル(AAPL) | 6.87% | 6.95% | +0.08pt |
| マイクロソフト(MSFT) | 6.15% | 5.43% | -0.72pt |
| アマゾン(AMZN) | 3.84% | 3.87% | +0.03pt |
| アルファベット(GOOGL+GOOG) | 5.62% | 5.46% | -0.16pt |
| メタ(META) | 2.46% | 1.82% | -0.64pt |
| テスラ(TSLA) | 2.16% | 1.50%未満※ | -0.66pt以上 |
| マグニフィセント7合計 | 34.85% | 33.0%未満 | -1.85pt以上 |
※テスラは2026年8月20日時点のTop 10から陥落しており、正確なウェイトは公表データからは追えません。ただしTop 10の最下位(イーライリリー)が1.50%であることから、テスラのウェイトは少なくとも1.50%を下回っていることは確認できます。
意外に思われるかもしれませんが、マグニフィセント7の合計ウェイトは2025年末の34.85%から、2026年8月時点では33%を下回るまで縮小しています。上昇したのはエヌビディア・アップル・アマゾンの3銘柄のみで、マイクロソフト・アルファベット・メタ・テスラは軒並みウェイトを落としています。特にマイクロソフトとメタの下げ幅は大きく、テスラに至っては構成比率上位10銘柄からも外れました。

以前の記事では「S&P500上位10銘柄の集中度は過去最高水準にある」ことを検証しましたが、それは必ずしも「マグニフィセント7という顔ぶれ全体が伸び続けている」ことを意味しないようです。上位に食い込んでいる銘柄の顔ぶれ自体が、この8ヶ月で入れ替わりつつある(イーライリリーやマイクロン・テクノロジーが新たに上位圏に浮上している)、という点は見落とされがちなポイントかもしれません。
検証②:2026年の上昇のうち、マグニフィセント7の寄与は何%か
次に本題です。2025年12月31日から2026年8月21日までのS&P500の値上がり分(+12.1%)のうち、実際にマグニフィセント7が生み出した部分はどのくらいでしょうか。
寄与度は「2025年12月31日時点のウェイト × その銘柄の期間中の株価変化率」の合計で近似しました。

マグニフィセント7の寄与は、全体のわずか19%
計算の結果、マグニフィセント7全体がS&P500の騰落率+12.1%に対して生み出した寄与度は+2.32ポイント、比率にして全体の約19%でした。残りの約81%(+9.79ポイント)は、マグニフィセント7以外の493銘柄が生み出しています。
内訳を見ると、プラスに寄与したのはエヌビディア(+1.17pt)・アップル(+0.95pt)・アルファベット(+0.57pt)・アマゾン(+0.46pt)の4銘柄で、合計+3.15ポイント。一方でメタ(-0.41pt)とテスラ(-0.42pt)はマイナスに寄与し、マイクロソフトはほぼ横ばい(-0.00pt)でした。つまり「マグニフィセント7」とひとくくりにされがちな7銘柄の中でも、実際に指数を押し上げたのは半分程度にとどまり、残りは横ばいか押し下げ要因になっていたことになります。
上段のグラフを見ると、マグニフィセント7(加重平均)は4月上旬の急落局面で一時-15%近くまで沈み込み、8月時点でも+6.7%とS&P500全体(+12.1%)の伸びに届いていません。むしろ「その他493銘柄」の加重平均リターンは+15.0%と、マグニフィセント7を上回るペースで上昇しています。
「AIが牽引した」という見出しは、エヌビディアなど一部の銘柄については的を射ていますが、「マグニフィセント7」という括り全体で見ると、2026年のS&P500の上昇を説明する主役はむしろ、あまり注目されない493銘柄の方だった、というのが今回の試算結果です。

それでも言えること・留意点
今回の試算には、いくつか性質上の限界があります。
- 年始時点のウェイトで固定した一次近似です:実際にはウェイトは日々変動しており、ある銘柄が値上がりすればその銘柄のウェイト自体も期間中に増えていきます(複利的な効果)。今回の計算はこの変動を無視した単純な按分であり、実際の寄与度とは多少のずれがあります
- 「その他493銘柄」は残差として逆算した値です:499銘柄それぞれの株価データを個別に積み上げたものではなく、「S&P500全体の実績騰落率」から「マグニフィセント7の寄与度」を差し引いた残差として算出しています
- SPYのウェイトは指数そのものではありません:SPYはS&P500に連動するETFであり、構成比率はS&P500公式のものときわめて近い値ですが、完全に一致するとは限りません
- 「マグニフィセント7」という括り自体への留保:アップルやテスラは、エヌビディアやマイクロソフトほど「AI関連決算」の物語に直結する企業ではありません。今回はあくまで市場で広く使われている7銘柄の括りをそのまま採用しましたが、この括り方自体に唯一の正解があるわけではない点は留意が必要です
こうした限界を踏まえても、「S&P500の2026年の上昇はマグニフィセント7が牽引した」という単純化された物語には、少なくとも寄与度ベースで見る限り誇張がある、と筆者は考えます。
まとめ:読者の状況別に考える
インデックスファンドで淡々と積み立てている方 S&P500やオール・カントリーに投資している場合、今回の結果は特に行動を変える材料にはなりません。むしろ「一部の有名銘柄だけが特別な値動きをしているわけではなく、幅広い銘柄の底上げが指数を支えている」ことが確認できたとポジティブに捉えることもできます。長期・積立・分散という基本方針を変える理由はなさそうです。
個別株にも関心がある方 「AI関連株なら何でも上がる」わけではなく、マグニフィセント7の中でも明暗が分かれていることは、今回のデータからも読み取れます。「有名企業だから」という理由だけで値動きを予測するのは難しい、という当たり前ではありますが見落としがちな事実を、数字で再確認する材料になるかもしれません。
「集中リスク」が気になっている方 上位10銘柄の集中度自体は依然として高い水準にありますが、その中身(顔ぶれ)は固定的ではなく、この8ヶ月だけでも入れ替わりが起きています。「集中度が高い=特定の7銘柄に依存している」と単純に捉えるより、「指数内での勢力図は常に変化している」と捉える方が実態に近そうです。
免責事項
本記事で紹介したデータは、SPDR® S&P 500® ETF Trust(SPY)のFact Sheetおよびyfinance経由で取得したS&P500・マグニフィセント7各銘柄の過去の実績値に基づく試算であり、将来の運用成果や値動きを保証するものではありません。寄与度の計算は年始時点のウェイトを固定した一次近似であり、実際の指数計算とは異なります。投資判断は本記事の内容のみに基づかず、最新の一次資料をご自身でも確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。


コメント