証券会社の「S&P500年末予想」はどれだけ当たる?過去8年の的中率を一次データで検証した

証券各社が出す「S&P500年末予想」がどれだけ当たるかを一次データで検証する記事のアイキャッチ画像。スーツを緩めたアナリスト風の3Dチビキャラクターが、オフィスの壁に掛かった「S&P500 予想」と書かれたダーツボードに向けてダーツを投げている。的の中心から大きく外れた場所に何本ものダーツが刺さっている一方、本人は自信満々な表情でポーズを取っている。 米国株投資

証券会社の「S&P500年末〇〇pt予想」、実際どれくらい当たっているのでしょうか

12月が近づくと、ニュースやSNSで「ゴールドマン・サックスがS&P500の年末目標を8,000ptに引き上げ」「UBSは8,100ptを予想」といった見出しをよく見かけます。2026年に入ってからも、証券各社が年始に発表した「今年の目標株価」が何度も話題になりました。

そして本記事を書いている2026年8月15日時点、S&P500は約7,786ptまで来ています。年始に証券各社が出していた予想と比べて、今の水準はどう位置づけられるのでしょうか。そもそも、この手の「年末予想」はこれまでどれくらい当たってきたのでしょうか。

エンジニアとしては、こうした「予想」を見るたびに「じゃあ過去の予想と実績を並べてみたらどうなるんだろう」と気になります。当ブログのコンセプトである「パンフレットの数字は信じない」にも通じるテーマなので、今回は証券各社の年始予想と実際の年末終値を一次資料ベースで突き合わせ、答え合わせをしてみます。

そもそも「年末目標株価」とは何なのか

証券会社(特に大手投資銀行やアセットマネジメント会社)は、毎年11〜12月頃に翌年の株式市場見通しをまとめた「アウトルックレポート」を発表します。その中の目玉が、S&P500などの主要指数について「来年末はこの水準になるだろう」と数値化した目標株価(イヤーエンド・ターゲット)です。

CNBCやロイター、ブルームバーグといった経済メディアは、主要な証券会社十数〜数十社の目標株価を集計し、平均値・中央値という形で「ウォール街のコンセンサス予想」として毎年報道します。これが「年末〇〇pt予想」の正体です。

見出しになりやすく、新年の運用方針を考える際の目安として引用されることも多い数字ですが、それが実際にどれくらいの精度を持つのかは、意外と検証されないまま毎年更新されていきます。

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データの出典

今回の検証で使用したデータは以下の2種類です。

①証券各社の年始コンセンサス予想(年ごとに出典が異なります)

  • 集計方法は年によって「平均」「中央値」が混在し、集計元の社数も一定ではありません(この点自体が後述する留意点の一つです)
  • 具体的な出典は、検証①の一覧表に年ごとに明記しています(Bloomberg集計、Reuters世論調査、CNBC Market Strategist Survey、FactSetボトムアップ集計など)
  • 取得日:2026年8月15日(各記事のアーカイブをWeb検索で収集)

②S&P500の実績値

  • データ内容:S&P500指数(^GSPC)の年末終値(2017〜2025年)、および2026年8月14日終値
  • データ出典:Yahoo Finance(yfinance経由)
  • 取得日:2026年8月15日

なお、年末目標株価は年央に何度も上方・下方修正されるのが通例です(今回集計したのは、あくまで「その年が始まる時点」でのコンセンサス予想です)。年内の修正履歴まで追うと膨大になるため、今回は「年始時点の予想」対「実際の年末終値」というシンプルな比較に絞っています。

検証①:過去8年、予想はどれくらい外れてきたのでしょうか

2018年〜2025年の8年分について、年始のコンセンサス予想と実際の年末終値を並べたものが以下の表です。

対象年予想公表時期年始のコンセンサス予想出典実際の年末終値乖離率方向
2018年2017年12月2,854ptBloomberg集計2,506.85pt-12.2%
2019年2018年12月2,975ptReuters調査(46社中央値)3,230.78pt+8.6%
2020年2019年11月3,325ptCNBC調査(20社中央値)3,756.07pt+13.0%
2021年2020年12月4,000ptFactSetボトムアップ集計4,766.18pt+19.2%
2022年2021年12月5,225ptFactSetボトムアップ集計3,839.50pt-26.5%
2023年2022年12月4,009ptBloomberg集計(17社平均)4,769.83pt+19.0%
2024年2023年12月4,861ptCNBC Market Strategist Survey(平均)5,881.63pt+21.0%
2025年2024年12月6,630ptCNBC Market Strategist Survey(平均)6,845.50pt+3.3%

※「方向」は、その年始に予想されていた騰落方向(上昇/下落)と、実際の騰落方向が一致していたかどうかを表しています。

証券各社の年始予想と実際の年末終値を2018年から2026年まで並べた折れ線グラフ(上段)と、年ごとの乖離率を示す棒グラフ(下段)。上段は予想(点線)と実績(実線)が2022年に大きく乖離し、2026年にかけて再び接近していることを示す。下段は8年間で乖離率が-26.5%から+21.0%までばらつき、±10%以内に収まったのは2019年と2025年の2回のみであることを示している

数字を集計すると、8年間の平均絶対乖離率は15.3%でした。「証券会社の目標株価は平均して15%前後外れる」という調査結果は他のメディアでも報告されており、今回の集計とおおむね近い水準です。

±10%以内を「当たり」と定義すると、8年間で条件を満たしたのは2019年・2025年の2回のみ(的中率25%)でした。基準の取り方次第で数字は変わりますが、少なくとも「毎年かなり近い数字が出ている」とは言いがたい結果です。

一方で、上昇か下落かという「方向」だけを見ると、8年中6年(75%)は当たっています。外したのは2018年と2022年で、いずれも「上昇を予想していたのに実際は下落した」というケースでした。幅は大きく外すが、方向はそこそこ当たるというのが、この8年間の傾向といえそうです。

検証②:相場が「急変」した年ほど外れやすいのでしょうか

先ほどの表を見ると、乖離率が特に大きかったのは2018年(-12.2%)、2021年(+19.2%)、2022年(-26.5%)でした。2018年と2022年は方向自体を外した年、2021年はコロナ禍からの急回復で予想を大幅に上回った年です。この3年を「急変・サプライズ年」、残りの5年(2019・2020・2023・2024・2025年)を「通常年」として平均絶対乖離率を比べてみます。

通常年(2019・2020・2023・2024・2025年)と急変・サプライズ年(2018・2021・2022年)の平均絶対乖離率を比較した棒グラフ(上段)。通常年は13.0%、急変・サプライズ年は19.3%で、急変年の方が乖離が大きいことを示す。下段は2026年のS&P500日次推移(1月〜8月)に、2026年末の目標株価7,911pt(2025年12月公表)を水平の点線で示し、2026年8月14日時点の実績7,786ptを赤丸でマーカー表示している

通常年の平均絶対乖離率が13.0%であるのに対し、急変・サプライズ年は19.3%でした。差は約6.3ポイントで、「相場が荒れた年ほど予想が外れやすい」という傾向自体はデータからも読み取れます。

ただし、この差はそこまで劇的とは言えません。むしろ注目すべきは、2021年のように「方向は当たっていたのに、上昇の勢いを大きく見誤った」ケースがあることです。証券会社の予想は、前年からのトレンドをある程度延長する形で作られる傾向があり、相場が「加速」する場面にも「反転」する場面にも弱い、というのがより実態に近い見方かもしれません。

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検証③:2026年の「年末目標」に対して、今はどのあたりにいるでしょうか

ここからが本記事の時事的な部分です。2026年についても、証券各社は2025年12月時点で「2026年末(12月31日)にはここまで来るだろう」という目標株価を発表しています。CNBC Market Strategist Survey(2025年12月19日公表)によるコンセンサス予想は、2026年末時点の平均7,911ptでした。

もちろん、2026年はまだ終わっていません。ここで確認したいのは検証①②のような「年末の答え合わせ」ではなく、「年の途中である今、その年末目標に対してどのくらいの位置にいるか」という中間チェックです。本記事執筆時点(2026年8月14日終値)のS&P500は7,785.76pt。年末目標の7,911ptとの差は、現時点でわずか-1.6%にとどまっています。

これはあくまで「年末を待たずに算出した暫定的な距離」であり、検証①②で扱った「確定した年末実績と予想の乖離率」とは性質が異なる数字です。とはいえ過去8年の年末時点の乖離幅(±10%超が大半)と比べれば、現時点ではかなり予想に近い位置につけている、とはいえそうです。年始からまだ7.5ヶ月しか経っていない段階ではありますが、少なくとも今のところ大きく外れてはいない、という状況です。

ただし、ここで気をつけたいのは「年央時点で予想に近い=年末も近いとは限らない」という点です。例えば2021年は、年の前半までは比較的緩やかな上昇でしたが、後半にかけて加速し、最終的に予想を+19.2%も上回りました。逆に2018年は、年の途中までは堅調だったものの、10〜12月にかけての急落で年末には予想を-12.2%下回って着地しています。つまり、残り4.5ヶ月でどちらの方向にも大きく動く余地は十分にあります。

現時点の「7,786pt」という数字だけを見て「今年の予想はほぼ的中しそうだ」と結論づけるのは、少し早計かもしれません。

それでも言えること・留意点

ここまでの検証には、いくつか留意すべき点があります。

  • サンプル数が少ない:検証したのは8年分です。統計的に「傾向がある」と言い切るには心もとない数です
  • 集計方法が年によって異なる:平均値を使う年と中央値を使う年、集計する証券会社の数も年ごとにまちまちです。同じ「コンセンサス予想」でも、集計元によって数値が数%単位でずれることも珍しくありません
  • 予想は年央に何度も修正される:今回比較したのはあくまで「年始時点」の数字です。多くの証券会社は四半期ごとに目標株価を見直しており、年末に近づくほど実績値に「後追い」で近づいていく傾向があります
  • そもそも予想は「的中させるため」のものではない可能性がある:証券会社の目標株価は、リサーチの一貫性や顧客対応上の必要性から発表されている側面もあり、精度そのものを競う性質のものではないかもしれません

こうした限界を踏まえると、「証券会社の年末予想は当てにならない」と単純に断じるより、「参考程度の目安であり、大きく外れることも珍しくない」と捉えておくのが実態に近い、と筆者は考えます。

まとめ:読者の状況別に考える

年末予想のニュースに一喜一憂しがちな方 「〇〇証券が目標株価を引き上げた」という見出しは、過去の実績を踏まえると1つの意見以上のものではないと考えられます。強気の見出しが出たからといって投資判断を変える必要はなく、逆に弱気の見出しが出ても慌てる必要はなさそうです。

長期の積立投資を淡々と続けたい方 今回の検証結果は、「短期の値動き予想に基づいて売買タイミングを計る」ことの難しさを裏付ける材料の一つといえます。長期・積立・分散という基本方針を変える理由にはならないと筆者は考えます。

数字の裏側が気になる方 証券各社のコンセンサス予想は、Yardeni Researchなど一部の調査機関が継続的に集計・公表しています。関心がある方は、今回のような単年の答え合わせだけでなく、集計元ごとの手法の違いを比較してみるのも面白いかもしれません。

免責事項

本記事で紹介したデータは、S&P500種指数(^GSPC)および証券各社の公開情報に基づく過去の実績値であり、将来の運用成果や値動きを保証するものではありません。本記事は特定の証券会社・金融機関の予想の正確性を批判・保証する目的のものではなく、公開データに基づく一次検証を目的としています。投資判断は本記事の内容のみに基づかず、最新の一次資料をご自身でも確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。

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