新NISAの含み益、何%が「円安」のおかげ?S&P500を価格要因と為替要因に分解して検証した

S&P500の含み益を株価要因と円安要因に分解する記事のアイキャッチ画像。黄色パーカーを着たちびキャラの男の子がデスクでモニターを見つめており、画面に表示された右肩上がりの株価チャートから「株価」と「円安」とラベル付けされた2本の光る帯が分かれて流れ出し、「NISA」と書かれた透明な貯金瓶に注がれている 米国株投資

新NISAの含み益、何%が「株価」で何%が「円安」でしょうか。S&P500を要因分解してみました

S&P500は2026年8月に入ってから最高値の更新が続き、8月14日終値は7,785.76ptまで来ています。一方でドル円も8月13〜14日にかけて159円台に接近し、歴史的な円安水準が続いています。

新NISAの成長投資枠でS&P500や米国株インデックスファンドを積み立てている方の中には、「含み益がずいぶん増えてきた」と感じている方も多いのではないでしょうか。ただ、この含み益、どこまでが純粋な株価上昇の成果で、どこまでが円安という「追い風」の産物なのでしょうか。

エンジニア的な視点で見ると、この2つの要因は数式の上できれいに分解できます。「パンフレットの数字は信じない」という当ブログのコンセプトのとおり、今回は感覚ではなく一次データで「含み益の中身」を分解してみます。

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データの出典

今回使用したデータは以下の2種類です。

  • S&P500指数(^GSPC)のドル建て終値:2023年1月〜2026年8月14日、日次
  • ドル円レート(USDJPY):2023年1月〜2026年8月14日、日次
  • データ出典:いずれもYahoo Finance(yfinance経由)
  • 取得日:2026年8月15日

円建て換算値は、S&P500のドル建て終値にその日のドル円レートを掛け合わせたものです。「株価上昇分(価格要因)」は米ドルベースのS&P500自体の変化率、「円安分(為替要因)」はドル円自体の変化率として算出し、両者の掛け合わせによって生じるわずかな差分を「相乗効果(交差項)」として区別しています。

検証:円建てリターンを「価格要因」と「為替要因」に分解する

新NISAの成長投資枠が始まった2024年1月を起点に、S&P500の値動きを「ドル建て」「円建て換算」「ドル円レート」の3本で比較したものが以下のグラフです。あわせて、期間の取り方を変えると内訳がどう変わるかも下段に示しています。

S&P500の円建てリターンを価格要因と為替要因に分解した2段グラフ。上段は2024年1月を1.0として指数化した累積推移で、S&P500円建て換算が+85%、ドル建てが+64%、ドル円が+13%まで上昇したことを示す折れ線グラフ。2025年4月頃に急落する谷が見られる。下段は2023年年初・新NISA開始(2024年年初)・直近1年の3期間について、円建てリターンに占める価格要因・為替要因・相乗効果の内訳を積み上げ棒グラフで示し、2023年年初からは+148%(価格要因70%・為替要因15%・相乗効果15%)、新NISA開始からは+85%(価格要因75%・為替要因15%・相乗効果10%)、直近1年は+30%(価格要因67%・為替要因28%・相乗効果6%)となっている

新NISA開始から現在まで:8割弱は「株価そのもの」の成果

2024年1月2日から2026年8月14日までの約2年半で、S&P500はドル建てで4,742.83ptから7,785.76ptへと+64.2%上昇しました。同じ期間にドル円は141.13円から159.43円へと+13.0%の円安が進んでいます。

この2つを掛け合わせた円建て換算リターンは+85.4%でした。内訳を寄与度で見ると、価格要因(株価上昇分)が約75%、為替要因(円安分)が約15%、両者の相乗効果が約10%という比率になります。数字だけを見れば、この期間の含み益の大部分は「実際の株価上昇」によるものであり、円安はそれを底上げする一つの要因、という位置づけになりそうです。

期間を短く取ると、為替の存在感が増してきます

ただし、この比率は期間の取り方によって変わります。以下は3つの期間で同じ計算をした結果の完全版です。

比較期間S&P500(ドル建て)変化率ドル円変化率円建て換算リターン価格要因の寄与為替要因の寄与相乗効果の寄与
2023年年初から現在+103.6%+21.9%+148.2%約70%約15%約15%
新NISA開始(2024年年初)から現在+64.2%+13.0%+85.4%約75%約15%約10%
直近1年(2025年8月〜2026年8月)+20.4%+8.4%+30.4%約67%約28%約6%

直近1年だけを切り取ると、円建てリターン+30.4%のうち為替要因の寄与は約28%まで上がります。長期で見れば「実力(株価上昇)」が主役ですが、直近1年という短い窓で見ると、含み益の4分の1以上が為替に支えられている、という見方もできそうです。

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円安が止まれば、含み益の一部は目減りします

グラフの円建て換算ライン(濃紺)をよく見ると、2025年4月頃に大きく落ち込む谷があります。この時期はS&P500自体も一時的に下落しましたが、同時にドル円も円高方向に振れており、株価下落と為替の巻き戻しが重なったことで円建てリターンの落ち込みが増幅されました。

ここが今回の検証で一番お伝えしたいポイントです。為替要因はプラスに働くこともあれば、当然マイナスに働くこともあります。今の含み益のうち15〜28%程度が円安によって底上げされているとすれば、将来ドル円が反転して円高に振れた場合、その分だけ円建ての評価額は目減りする可能性があるということです。

これは「円安が続くから今のうちに利益確定すべき」という話ではありません。長期・積立・分散という基本方針を変える理由にはならないと筆者は考えます。ただ、「含み益=すべて株価上昇の実力」と捉えるのではなく、「その一部は為替という変動要因に乗っている」と認識しておくことは、相場の急変時に慌てないための備えになるはずです。

なお、将来大幅な円高(例えば1ドル100円)が起きた場合に、S&P500の複利成長がそのマイナスをいつ上書きするのかという、より長期的なシナリオ検証に関心のある方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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それでも言えること・留意点

  • 今回の分解はあくまで「事後的な要因分解」です。将来のドル円やS&P500の動きを予測するものではありません
  • 交差項(相乗効果)は誤差ではなく、価格と為替が同時に動くことで生じる数学的な性質です。期間が長く、値動きの振れ幅が大きいほど交差項も大きくなる傾向があります
  • 対象はS&P500(米国株)に限定した検証です。全世界株式(オルカン)など他の資産でも、外貨建て資産である以上は同様の構造で為替要因が乗っています
  • 本記事の起点はいずれも「新NISA成長投資枠の開始時期」など区切りのよい日付を選んでいますが、実際の読者それぞれの購入時期・平均取得単価とは異なります。ご自身の含み益を同じ方法で分解したい場合は、ご自身の購入日のS&P500水準とドル円レートを起点に計算し直す必要があります

まとめ:読者の状況別に考える

新NISAでS&P500・米国株ファンドの含み益が積み上がっている方 含み益の7〜8割は株価上昇そのものによるものですが、直近1年に限れば為替要因の寄与が3割近くに達しています。円安が反転した場合に評価額がどの程度動きうるか、頭の片隅に入れておくとよさそうです。

これから米国株・全世界株への投資を始める方 為替水準を気にしてタイミングを計るより、長期・積立・分散という基本方針を淡々と続けることの方が、今回の検証結果からも合理的だと筆者は考えます。

取り崩し・出口を検討し始めている方 評価額のうち為替要因が大きい局面で一括利益確定すると、その後の円高で「あの時売っておけばよかった」という後悔にも「待てばよかった」という後悔にもなり得ます。取り崩しは一括ではなく、時間を分散する方法も選択肢として検討する価値があります。

免責事項

本記事で紹介したデータは、S&P500種指数(^GSPC)およびドル円レート(USDJPY)の過去の実績値に基づく分析であり、将来の運用成果や為替水準を保証するものではありません。価格要因・為替要因への分解は本記事独自の計算方法によるものであり、金融機関等が公式に採用している算出方法と一致しない場合があります。投資判断は本記事の内容のみに基づかず、最新の一次資料をご自身でも確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。

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