新NISA、買付額は政府目標を3年前倒しで達成——でも「口座数」はまだ道半ば

「56兆円」の目標テープを笑顔で駆け抜ける黄色いパーカーの男の子。背景では「NISA」と書かれた旗と、目標ラインを超えて伸びる棒グラフが描かれている。 NISA

「新NISAを使う人、最近すごく増えている気がする」——SNSやニュースでそう感じている方は多いのではないでしょうか。実際、金融庁は2025年、新NISAの「累計買付額」が政府目標を大幅に前倒しで達成したことを明らかにしています。

一方で、同じ金融庁の資料を見ると、もうひとつの目標である「口座数」はまだ目標に届いていません。買付額は前倒し達成、口座数は道半ば——この2つの指標がなぜ対照的な動きになっているのか。パンフレットのグラフだけを見ていても分からないので、金融庁・日本証券業協会の一次資料に当たって数字を確認し、今後の見通しを試算してみました。

まず押さえておきたい2つの政府目標

新NISAには、制度開始時に金融庁が示した2つの数値目標があります。

  • 累計買付額:5年以内(2027年12月末まで)に56兆円
  • NISA口座数:2027年12月末までに3,400万口座

このうち「累計買付額」は、2025年2月末時点で新旧NISA合算の累計買付額が56兆円を突破したと日本総合研究所のレポートで報告されています。当初の計画より約3年前倒しでの達成です。

その後も買付ペースは衰えておらず、2025年12月末(速報値)時点では累計71.4兆円まで積み上がっています。一方、口座数は2025年12月末時点で2,826万口座。3,400万という目標にはまだ距離があります。

一次資料で確認した数字

推測や伝聞ではなく、金融庁・日本証券業協会が公表した一次資料の数値だけを時系列で並べたものが以下の表です。数値はすべて全金融機関ベース(新旧NISA合算)です。

時点NISA口座数累計買付額出典
2023年12月末(新NISA開始前)2,125万口座35.3兆円日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況」(2026年2月)
2024年12月末2,559万口座52.6兆円同上
2025年3月末2,646万口座59.0兆円金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果」(令和7年3月末時点)
2025年6月末2,696万口座63.0兆円金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果」(令和7年6月末時点)
2025年12月末(速報値)2,826万口座71.4兆円日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況」(2026年2月、金融庁速報値ベース)

政府目標との対比:

指標政府目標目標期限直近実績(2025年12月末)状況
累計買付額56兆円2027年12月末71.4兆円2025年2月末に達成(約3年前倒し)
NISA口座数3,400万口座2027年12月末2,826万口座未達(あと約574万口座)

2025年の年間買付額は18兆7,935億円(前年比8%増)でした(出典:モーニングスター・ジャパン「NISA概要レポート2026年第1四半期」)。この数字は次の章の試算で使います。

グラフにすると、2つの指標の対照的な動きがよりはっきり見えます。

口座数の推移と政府目標/累計買付額の推移と2027年末シナリオ試算

なぜ買付額だけこんなに早く伸びたのか

制度開始前の想定を上回るペースで買付額が積み上がった背景として、次のような制度上の変更が考えられます。

  • 非課税保有期間が無期限化されたこと。旧NISAは非課税で保有できる期間に上限がありましたが、新NISAでは期限がなくなったため、「いつか売らなければ」という制約なく資金を投入しやすくなったと考えられます。
  • 年間投資枠が大幅に拡大したこと(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=最大360万円/年)。旧NISAより投資できる上限が大きくなった分、1人あたりの買付額も伸びやすい構造になっています。
  • 非課税保有限度額が1,800万円に拡大し、まとまった資金を移す動機が強まったこと。

これらはいずれも「すでに投資をしていた人・投資に前向きだった人」がより多くの資金を新NISAに投じやすくなった変化だといえます。つまり、買付額の急伸は「新しく投資を始めた人」だけでなく、「既存の投資家が投資額を積み増した」効果も大きいと考えられます。この点は次の章の口座数の話とつながってきます。

このペースが続くと、2027年末はどうなるか(試算)

2025年の年間買付額18.79兆円(前年比+8%)を起点に、今後2年間の伸び方について3つのシナリオで単純延長してみました。あくまで「過去のペースをそのまま伸ばしたら」という機械的な試算であり、市場環境や制度変更を織り込んだ予測ではない点にご留意ください。

シナリオ前提2026年末累計2027年末累計
A:横ばい継続年間買付額が18.8兆円で変わらない約90兆円約109兆円
B:成長率継続前年比+8%成長が続く約92兆円約114兆円
C:伸び鈍化成長率が+4%に半減する約91兆円約111兆円

3つのシナリオのいずれでも、2027年末には累計100兆円台に達する計算になります。これは当初の政府目標(56兆円)のおよそ2倍の水準です。モーニングスター・ジャパンのレポートでも同様に「2027年末に累計100兆円突破も視野に入る」との見方が示されています。

一人当たり平均買付額の推移/年間買付額の実績とシナリオ試算

もうひとつ気になるのが、「新しく口座を作った人」だけでなく「もともと口座を持っている人」の投資額がどう変化しているかです。累計買付額を口座数で割った「一人当たり平均買付額」を計算すると、2023年12月末の166万円から、2025年12月末には253万円まで増えています。口座数の伸びが緩やかになっている一方で、既存の利用者一人あたりの投資額は着実に積み上がっていると考えられます。

一方で「口座数」はなぜ伸び悩んでいるのか

口座数が政府目標(3,400万口座)にまだ届いていない理由について、金融庁の資料からは明確な単一の答えは示されていません。ここからは推測になりますが、いくつかの要因が重なっていると考えられます。

  • 投資に前向きな層はすでに新NISAへの移行が進んでおり、残っているのは「投資自体にまだ踏み出していない層」が中心になってきていること
  • 3,400万口座という目標が、日本の成人人口(約1億人強)のかなりの割合をカバーする野心的な水準であること
  • 買付額の伸びが「既存利用者の投資額の積み増し」で説明できる部分が大きく、新規の口座開設者数の伸び自体は鈍化していること

このあたりは断定できる材料が乏しいため、今後の調査結果を継続的に確認していきたいところです。

次の政府目標「家計の投資額倍増」をどう考えるか

日本総合研究所のレポートでは、買付額・口座数に続く新たな政策目標として「家計による投資額(株式・投資信託・債券等の合計残高)の倍増」が挙げられています。まだ具体的な数値目標や期限が固まった段階ではありませんが、今後の資産形成政策の方向性として押さえておいて良いと考えます。

読者の立場からすると、政府目標が達成されたかどうか自体は、自分の資産形成の成否には直接関係しません。大切なのは、自分自身が非課税枠をどう使い切っていくか、無理のないペースで積立を続けられているかという点です。NISAとiDeCo、どちらを優先すべきか迷っている方は、以下の記事も参考にしてください。

【連載 第2回】NISA vs iDeCo:損得の分岐点と優先順位のロジック
NISAとiDeCo、どちらを優先すべきか迷っていませんか?本記事では「流動性」と「所得税率」の2軸で、損益分岐点を論理的に判定するアルゴリズムを公開。自身の状況に合わせた最適なリソース配分をエンジニア的視点で導き出します。

まとめ:状況別に見る、この記事から言えること

すでにNISAで積立を続けている方へ

買付額の全体ペースが前倒しで伸びていることは、あなた個人の運用成績を左右するものではありません。ただ、非課税保有限度額(1,800万円)に対して自分がどこまで枠を使っているかを確認する良いタイミングだと考えます。

まだNISA口座を持っていない方へ

口座数の伸びが鈍化しているというデータは、裏を返せば「投資をまだ始めていない人がまだ一定数いる」ということでもあります。制度自体は非課税保有期間が無期限化されており、始めるタイミングを気にしすぎる必要は薄いと考えます。証券会社によってはクレジットカード積立のポイント還元なども用意されているので、口座開設時の比較材料として参考にしてみてください。

新NISAのクレカ積立、年間ポイントは実際いくら?主要4社の条件を一次資料で計算してみた
楽天・SBI・マネックス・三菱UFJ eスマートのクレカ積立ポイントを一次資料で徹底比較。還元率の条件や2026年改悪情報も解説。月3万・5万・10万の実額シミュレーション付き。

今後の制度動向をウォッチしたい方へ

2026年度税制改正(令和8年度税制改正大綱)では、こどもNISA(0〜17歳向けの新たな投資枠)の創設なども決定しています。この記事では触れていないため、別記事で改めて整理する予定です。

免責事項

本記事は、金融庁・日本証券業協会・日本総合研究所・モーニングスター・ジャパンが公表した一次資料をもとに、筆者が独自に整理・試算したものです。将来の投資成果や政府目標の達成を保証するものではありません。特定の金融商品・金融機関の購入や利用を推奨する内容ではなく、投資判断は必ずご自身の責任で行っていただきますようお願いいたします。数値は公表時点のものであり、今後の調査で遡及的に修正される可能性があります。

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