はじめに:「攻め」の前に、数字の構造を知る
新NISAでS&P500への積立が定番化しつつある中、「もう少し積極的なリターンを狙いたい」という気持ちからNASDAQ100に興味を持つ方が増えています。
確かに、過去の実績だけを見れば、NASDAQ100のリターンはS&P500を大きく上回っています。ただ、「S&P500より高リターンだから」という理由だけで選ぶのは危険です。高リターンの裏に何があるかを理解した上で判断することが、長期投資を継続する上で不可欠だと考えます。
この記事では、2005年〜2024年の20年間のデータをもとに、NASDAQ100とS&P500のリターン・リスク構造をフラットに比較します。「どちらが正解か」を断定するつもりはありません。数字を整理した上で、判断はご自身にお任せします。
この記事で使用したデータについて
数字の根拠を明示するため、以下の実績データを使用しています。
- QQQ(Invesco NASDAQ100 ETF)年次トータルリターン実績値
- SPY(State Street S&P500 ETF)年次トータルリターン実績値
- 対象期間:2005年〜2024年(20年間)
- 出典:Morningstar 各ETF年次パフォーマンスデータ
- ※いずれも配当再投資込みの米ドルベースリターンです
- ※本データはETFのリターンであり、日本籍の投資信託のリターンとは異なります
20年間のリターン比較:数字で見ると
まず、100万円を2004年末に投資した場合のシミュレーション結果です(下のグラフ参照)。
| 指標 | NASDAQ100(QQQ) | S&P500(SPY) |
|---|---|---|
| 20年後の評価額(100万円→) | 約1,533万円 | 約697万円 |
| 20年間のCAGR(年複利成長率) | 約14.6% | 約10.2% |
| 年平均リターン(算術平均) | 約17.6% | 約11.7% |
| 最大ドローダウン(高値からの最大下落) | 約-41.7% | 約-36.8% |
※ CAGRとは「Compound Annual Growth Rate」の略で、元本が最終評価額に到達するために必要な一定の年率を意味します。年ごとの変動を均した「実効的な年率」です。
20年の累積リターンに大きな差があることは事実です。ただし、最大ドローダウン(リーマンショック時のもの)にも注目してください。NASDAQ100は-41.7%、S&P500は-36.8%と、差は約5ポイントにとどまっています。
グラフ:累積リターンとドローダウンの推移
※下記グラフは、QQQ・SPYの年次リターン実績値をもとにPythonで算出・可視化したものです。

グラフから読み取れるポイントを整理します。
上段(累積リターン)
2009年以降、NASDAQ100の成長加速が顕著です。2020年のコロナショック後の回復も急速で、2023年には+54.85%という年次リターンを記録しています。一方でリーマンショック(2008年)では-41.73%と急落しており、プラスの振れ幅と同じくらいマイナスの振れ幅も大きいことがわかります。
下段(ドローダウン)
両指数ともリーマンショック(2008〜2009年)で最大の落ち込みを記録しています。NASDAQ100の最大ドローダウンは約-41.7%。グラフには記載していませんが、2000年〜2002年のITバブル崩壊時にはQQQが約-83%下落し、回復に15年以上を要しました。2005年始点のデータにはこの期間が含まれていない点は、重要な文脈として記憶に留めておく必要があります。
NASDAQ100の構造:なぜ強く、なぜ振れ幅が大きいか
NASDAQ100は、NASDAQ市場に上場する非金融企業上位100社で構成される指数です(2026年5月時点の選定ルールに基づく)。
主な特徴として:
- ハイテク・テクノロジー企業への集中度が高い:Apple、Microsoft、NVIDIA、Amazon、Alphabetなどが上位を占める
- セクター集中リスクがある:S&P500と比べて業種の分散が限定的
- 成長期待が株価に織り込まれやすい:業績変化に対して株価が敏感に反応する
S&P500は米国の大型株500社を対象とし、金融・ヘルスケア・エネルギーなど幅広い業種を含みます。NASDAQ100はその中でもテクノロジー系に偏った「集中投資」に近い性格を持っています。
リスクの「正体」を整理する
NASDAQ100の「リスクが高い」という表現は正確ではありません。正確には「リターンの振れ幅(ボラティリティ)が大きい」ということです。
- 上昇するときはS&P500より急速に上昇する
- 下落するときもS&P500より急速に下落する
この振れ幅を許容できるかどうかが、NASDAQ100を選ぶかどうかの本質的な判断基準です。
特に注意が必要なのが、下落時のメンタルへの影響です。資産が40%以上減少した状態が1〜2年続く局面は、頭で「長期投資だから大丈夫」とわかっていても、精神的な負担は相当なものになります。その状況で「売らずに持ち続けられるか」が、最終的なリターンを左右します。
積立投資との相性
毎月一定額を積み立てる場合(ドルコスト平均法)、暴落局面は「より安い価格で多く買える」機会になります。この点で、振れ幅の大きなNASDAQ100は積立投資と相性が悪いわけではありません。
ただし「積立だから安心」というわけでもありません。積立中に大きな下落が続く局面で、追加投資を継続できるかどうかは、あくまでご自身のリスク許容度によります。

具体的にどのファンドで投資するか(2026年時点)
NASDAQ100への投資を検討する場合、低コストの投資信託を選ぶのが基本です。新NISAの成長投資枠・積立投資枠の対象可否は各証券会社・ファンドでご確認ください。
なお、信託報酬の数値は随時変更される可能性があります。投資判断の前に各社の最新の目論見書でご確認ください。
| ファンド名 | 信託報酬(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| ニッセイNASDAQ100インデックスファンド | 0.2035% | 業界最安水準(2026年5月時点) |
| eMAXIS NASDAQ100インデックス | 0.44% | 三菱UFJアセットマネジメント運用 |
| 楽天・NASDAQ-100インデックス・ファンド | 0.198% | 楽天証券ユーザー向け |
※上記はあくまで参考情報です。コスト以外の条件(取扱証券会社、純資産規模、運用実績年数など)も合わせて確認することをおすすめします。
まとめ:どう考えるか
| あなたの状況 | 考え方の参考 |
|---|---|
| S&P500積立を継続中 | 現状維持で合理的。NASDAQ100への変更は必須ではない |
| リターン向上を検討中 | NASDAQ100のドローダウン幅を許容できるか、まず自問する |
| ポートフォリオの一部で検討中 | 全体の何割かをNASDAQ100にする考え方は合理的な選択肢のひとつ |
| 投資歴が浅く暴落未経験 | まずS&P500で実際の下落局面を経験してから判断するのも一案 |

NASDAQ100は、過去20年の実績として見れば、優れたリターンをもたらしてきた指数です。一方で、振れ幅の大きさとセクター集中リスクは実在します。これらを理解した上で、ご自身のリスク許容度と投資期間に合った判断をしてください。
データ・免責事項
- 本記事で使用した数値はQQQ・SPY(米国ETF)の年次トータルリターン実績値(Morningstar)をもとにしており、日本籍の投資信託の実績とは異なります
- シミュレーションは過去データに基づくものであり、将来のリターンを保証するものではありません
- 信託報酬等の数値は2026年5月時点の情報であり、変更される場合があります
- 本記事は情報提供を目的としており、特定のファンドへの投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします


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