新NISAが始まり、投資初心者が最初にぶつかる壁。それが「S&P500(米国株式)」と「全世界株式(通称:オルカン)、どっちを買うべきか問題」です。
ネット上では「過去のリターンが高いS&P500一択!」という声もあれば、「分散こそ正義、オルカン一択!」という声もあり、議論が尽きません。
これまでS&P500やNASDAQ100について解説してきた当ブログですが、今回は「数字と合理性」、そして「投資の不確実性」に基づいて、この論争に決着をつけます。
結論から言えば、どちらも90点以上の優秀なファンドです。 しかし、「過去のチャートを見て、右肩上がりだから」という理由だけで選ぶと、将来痛い目を見る可能性があります。
今回は、両者のスペックを分解し、投資のプロも警鐘を鳴らす「データの罠」を回避した上で、あなたに最適な一本を選び出します。
基礎知識:オルカンの中身は「60%がアメリカ」という事実
まず、スペック(中身)の確認です。 「全世界」という響きから、地球上の国々に均等に投資しているイメージを持つかもしれませんが、実態は異なります。
オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式など)が連動する指数「MSCI ACWI」の構成比率は、以下のようになっています(※2026年執筆時点概算)。
- 米国:約62%
- その他先進国(日本、イギリス、フランスなど):約28%
- 新興国(中国、インドなど):約10%

そう、「全世界」と言いつつ、半分以上はアメリカなのです。 さらに上位組入銘柄を見ても、Apple、Microsoft、NVIDIA、Amazon…と、S&P500の上位陣と全く同じ顔ぶれが並びます。
S&P500との相関関係
「オルカンならアメリカが暴落しても大丈夫」というのは誤解です。 中身の6割がアメリカである以上、アメリカがくしゃみをすれば、オルカンも風邪を引きます。値動き(相関)は非常に似通っており、分散効果はあるものの、「全く違う動きをする」わけではありません。
実績比較と「過去データ」の正しい見方
では、なぜ多くの人がS&P500を推すのでしょうか? それはシンプルに、「過去30年以上の実績において、米国株が全世界株を圧倒しているから」です。

チャートを見れば一目瞭然、S&P500の圧勝です。これを見ると「じゃあS&P500でいいじゃん」となりがちですが、ここで投資において最も危険な罠について警告させてください。
【重要】過去のリターンは、将来を保証しない
多くの著名な投資家や学者が指摘するように、市場データには以下の性質があります。
- リスク(値動きの振れ幅): 過去のデータをある程度再現する傾向がある。
- リターン(利益): 過去のデータは将来を保証しない。
むしろ、歴史的に見れば、上がりすぎた資産は「平均への回帰(Mean Reversion)」という法則によって、将来のリターンが低くなる可能性すらあります。「過去30年最強だったから、次の30年も最強」という理屈は、投資の世界では通用しません。

それでも「米国(S&P500)」を選ぶ合理的な理由
「チャートが信用できないなら、なぜS&P500を選ぶのか?」 それは、過去の株価ではなく、米国市場の「構造(ファンダメンタルズ)」に優位性があると判断する場合です。
- イノベーションの土壌: GAFAMやNVIDIAのような世界を変える企業が生まれ続けるエコシステムがあるか。
- 人口動態: 先進国の中で数少ない、人口増加が予測される国であるか。
- 法整備と株主還元: 企業が株主の利益を最優先する法制度や文化が徹底されているか。
S&P500を選ぶべきは、チャートの形に魅了された人ではなく、これら「米国の稼ぐ仕組み」が今後も他国を凌駕すると論理的に信じられる人だけです。
それでも「オルカン」を選ぶべき合理的な理由
一方、オルカンを選ぶ最大のメリットは「予測の放棄」と「自動メンテナンス機能」にあります。
「米国没落」という最大のリスクヘッジ
歴史を振り返れば、ローマ帝国、大英帝国、そしてかつての日本。永遠に覇権を握り続けた国はありません。 もし30年後、今の私たちには想像もできない国が覇権を握っていたら? S&P500一本では、その変化に対応できません。
しかし、オルカンを持っていれば話は別です。 オルカンは「時価総額加重平均」という仕組みを採用しているため、もしインドの株価が上がって米国の株価が下がれば、自動的にインド株の比率を増やし、米国株の比率を下げてくれます。
- S&P500: 「米国という構造」に賭ける。
- オルカン: 「どこの国が勝ってもいいようにしておく」仕組みを買う。
「次はどの国が来るか?」を考えるコストすら省けるのが、オルカンの真骨頂です。

結論:あなたの性格で決める「ファイナルアンサー」
スペックとロジックが出揃ったところで結論です。 どちらも正解ですが、選ぶ基準を「過去のリターン」ではなく「未来へのスタンス」に変えて決断してください。
パターンA:S&P500を選ぶべき人
- 過去のチャートではなく、「イノベーションを生む米国の構造」が今後も続くと論理的に判断できる人。
- 「現在のアメリカ株は割高かもしれない(リターンが下がるかもしれない)」という可能性を理解した上で、それでも他国より優位性があると考える人。
- 資産の最大化効率(シャープレシオなど)を重視する合理主義の人。
パターンB:オルカンを選ぶべき人
- 将来どの国が成長するかを予測するのは不可能(効率的市場仮説)だと考える人。
- 米国一強の時代が終わるリスクを警戒し、リターンが数%下がっても「予測不要の安心感」が欲しい人。
- 究極のほったらかし運用で、投資のことなど忘れて副業や趣味に没頭したい人。
まとめ:重要なのは「選んだ後に迷わないこと」
S&P500とオルカン。一番の失敗は、「S&P500を買った後に、暴落が来て怖くなりオルカンに乗り換える」あるいはその逆を繰り返すことです。
自分のリスク許容度と投資哲学に照らし合わせ、「これなら20年持ち続けられる」と信じられる方を選んで、あとは淡々と積み立てる。それがストック型副業としての投資の正解です。

(次回予告) さて、「資産最大化」の観点からインデックス投資の王道を紹介してきましたが、日本人に大人気の「高配当株投資」についてはどうでしょうか? 「配当金で不労所得」という響きは魅力的ですが、資産形成の効率性(数字)で見ると、実はかなり「非効率」な選択かもしれません。 次回は、あえてその「不都合な真実」に切り込みます。


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